「うん」


愛人に手を引かれて、ソファに座る。


「ちょっと待ってて」


私の頭をなでた愛人は、すぐに食卓から皮を剥いて食べやすく切ったオレンジの入ったガラスのお皿を持ってきて、私の隣に座った。


「来る？」


「うん」


愛人がテーブルにお皿を置いて、膝をポンポンと叩く。


その膝に座って、愛人に体を預けた。


「ほら」


フォークに刺したオレンジを、私の口に持ってくる。


「美結、食べて？」


促されて口を開けると、オレンジが口の中に入ってきて、甘酸っぱい味と香りが一気に広がった。


最近、なかなか食欲が湧かない私に、愛人がこうして食べさせてくれている。


まるで子供みたいに、愛人にいっぱい甘えてる。


自分では、赤ちゃんの状態がどうであろうと覚悟は出来てるはずなのに、こうやって食欲がないとかが出てきてしまうってことは、やっぱりまだ心は不安定なままなんだと思う。