「私出来るのに」


「出来てもしちゃダメ。椅子から落ちたらどうするの」


少し怒ったような声で私にそう言った愛人は、椅子に乗って塩を取り出した。


「マー君」


「ん?」


愛人は塩の入った袋を私に渡し、椅子を片付ける。


「過保護」


「美結がいい子にしてたら、こんな風に過保護にならないよ」


椅子を元に戻し私のところに来た愛人は、そっと私の頭をなでた。


「もう、子供扱いしないでよ!」


「だって、美結本当に危なっかしいし」


そう言って優しく私を抱きしめる。


「大丈夫だよ?私、ママになるんだもん」


愛人の背中に腕を回す。


「分かってる。けど、椅子は危ない」