「イヤ!」


「美結!」


このまま愛人といたら、赤ちゃん取り上げられちゃうかもしれない。


そう思ったら勝手に体が動いていた。


愛人から逃げるように、ベッドから下り急いで寝室から出る。


「待って、美結!」


「イヤ!来ないで!」


愛人から逃げるようにしてたどり着いたのはキッチン。


「美結、話を聞いて」


「ヤダ」


水道やIHのコンロに手をついて、愛人から離れるようにジリジリと後ずさる。


「来ないで、マー君」


そう言ってIHに手をついた、つもりだった。


でも私が触ったのは、野菜スープが入ったお鍋。


まだ熱を持ったお鍋に驚いて手をどけると、今度は肘がお鍋の取手にあたってしまい中身がこぼれて、足にかかってしまった。