マジついてねー。

 俺はしゃがみ込むと苛々しながら、教科書やプリントを鞄に入れた。

 気持ちがそのまま行動に出ていたのか、ぶっちゃけプリントなんぞぐしゃぐしゃになってしまっていた。

 落とした物の土っぽくざらざらとした感触から、これからの不便さが予想され、尚更苛立ちを煽った。

 と、不意に視界に白くて小さい手が現れる。

 顔を上げると、それは小梅の手だった。

 小梅は無言で散らばった物を拾い、砂を払ってきれいに揃えると、「はい」と優しく笑って俺に差し出した。

「……あ、ありがと」

 そういえば後ろを小梅が歩いてたんだったな……。

 小梅が手伝ってくれたおかげで、すんなりと拾い終えることができた。

「手伝ってもらって悪かったな」

「ううん、困った時はお互い様だもん」

「えーと、もしよかったらっつってもあとちょっとだけど……家まで一緒に帰らないか?」

 拾うのを手伝ってもらったのに、それじゃあ、とあっさり別れて、また距離をとって歩くのは、我ながら薄情だと思った。

 なので、俺なりの真心で誘ってみた。

 すると、

「え!!……いいの?」

 小梅は信じられないとゆう顔で目を大きく見開いている。

「お、おう」

 小梅がここまで驚くとは思ってなかったので、俺も少し驚いて返事を微妙にかんでしまった。

「ありがとう」

 俺から改めて了承の言葉を得た小梅は、花が咲いたような笑顔で顔を綻ばせた。

 今思えばこの日がきっかけだったと思う。