たいしたことないはずの家までの道のりが、ことの他長く感じる。
小梅が前を歩いていて、先に家に着いたとしても、家には入らず庭の花とかに水をやっている時があって――空気読めよ――俺が家に着いた時に鉢合わせになって目があったりなんかした日はばつが悪く、お互い急いで目を逸らしたものだ。
かと言って「お前もうちょっと長く学校に残ってろ」とか言う権利があるわけでもないし、俺はそこまでジャイアンじゃない。
でも自分があいつと気まずくならないために、学校に残ってるのもなんだかしゃくだ。
俺はなかば意地のように、この奇妙な小梅との下校を続けた。
そんなある日、俺は迂闊なことに鞄のチャックを閉め忘れていたらしく、下校途中、ふとした拍子に鞄の中を全部、アスファルトにぶちまけてしまったのだ。
