***
次の日の朝、俺はいつもより早起きをして、自転車に跨がりながら、小梅の家の前にいた。
ガチャリ
「いってきまーす」
元気な声とともにドアが開くと、小梅が姿を表す。
「……おはよ」
「おはよう」
なんの約束もなしに待っていた俺に、少々驚いていたようだったが、俺が照れながら挨拶をすると、小梅は頬を染め、無邪気に微笑んでかえしてくれた。
その後は、どちらから何も言わなくとも、俺と小梅は一緒に学校へと出発した。
「あー、なんか顔の傷のこと先生達につっこまれそうだな。
昨日の父さんと母さんに散々心配されたし。
まあ、クラスの奴と喧嘩したって無理矢理話し終わらせたけど、先生にそれを言うのは間違いなく自殺行為だよ。
やだなぁ男にからまれたなんて言ったらめんどくさいことになりそうだ。小梅、なんかいい言い訳ない?」
「えっ?! 言い訳?! うーん、そうだなぁ。
階段で転びました、とか?」
「……階段からどーゆう転び方したら顔に痣ができるんだよ。
宙返りでもして顔面からつっこまないと無理だろ」
「あははっ、そうだよね。ごめんごめん」
久しぶりにする、小梅とのたわいもない話しは本当に楽しかった。
まるで、中学生のあの頃に戻ったかのよう。
俺は、たまっていた胸の中の淀みが、清らかな小川にひたされたように澄みわたっていき、心が安らぐのを感じていた。
