僕の忠犬ハチ公



「真君!」

 男と舞がいなくなると、すぐに小梅が駆け寄ってきた。

「鼻血出てる……」

 そう言って俺にティッシュを渡す。

「…で……だよ…」

「え?」

「なんで助けたんだよ!!」

「……っ」

「俺、お前にあんな酷いことしたんだぞ!!
普通なら見捨てんだろ!!なんだ同情か?!
俺があんまりにも惨めだから同情したのかよ!!」

 俺は言い切ると、コンクリートの道路を力任せに殴りつけた。

 手が擦りむけて、血が滲む。

 俺の言葉を聞いた小梅は、しばしの間、悲しげな顔をして俯いていたが、やがて静かに口を開いた。

「……同情なんかじゃないよ」

「じゃあなんだよ!!
普通あんなこと言われたらもう嫌いになんだろ!!」

「……嫌いになれなかった」

「……え?」

 俺は、自分の耳を疑う。

「私、真君のこと嫌いになれなかったよ。
たしかにあの時は、私すごく傷ついた。
でも、その、うまく言えないけど、真君と一緒にいて楽しかった時のほうが多かったから。
真君にはいっぱい優しくしてもらったから。
だから、どうしても嫌いになれなかった」