僕の忠犬ハチ公




***

 あの夜から二週間程経った日の放課後、俺は一人でバス停へと歩いていた。

 朝の天気予報では午後から雨が降ると言っていたので、今日は自転車ではなく徒歩だった。

 ちなみに鈴木達にカラオケに行こうと誘われていたが、気乗りしなかったため断り、先に学校を後にしていた。

「はぁ」

 ため息をついて空を仰いだ。

 あの夜以来、舞とは一度しか会っていない。

 舞からの連絡が全くないため、俺からメールをし、会おうと誘ったのだが、バイトを理由に断られ続けた。

 バイトの後少しだけなら大丈夫、とようやく会えた一日も、バイトがあるから夜遅くしか会えない。

 そして明日は用事で朝早く起きなくてはいけないから、あまり遅くまでいれない。

 とのことで、実質二人で会った時間は十五分程だ。
 しかも、コンビニの前で座って話しただけ。

 けれど、相変わらず光のない瞳を見て安心した。

 虚空を抱えてるのは自分一人ではない。

 それを確認できたことが、十五分間の中で唯一いい出来事だと感じた。

 会ってから数日後、俺がメールで

「俺って舞の彼氏って言っていいの?」

「俺のこと好き?」

 と、聞くと

「いいよ」

「好きだよ」

 と、返ってくる。

 返事を見る度俺は、その文章を運んでくる携帯を壊したい衝動にかられた。

 好き、を並べられても、ハートマークをつけられても、そこに心がなければ、その言葉達はなんの意味ももたない。

 虚しい。

 心が向き合っていないと、付き合っているなんて名前だけで、寂しさが増すだけだ。

 前よりひどくなっていく虚無感と共に、自分の考えの甘さを呪った。

 同じ傷を抱えた者同士が一緒にいても、傷の舐めあいにしかならない。

 自分に欠けているものを持っている者でなければ、それは歪んだ依存を生み出すだけだ。



〜♪〜♪

 歩くなんて上の空で、そんなことを考えながらぼーっとつっ立っていると、メールの着信音がなった。

 携帯を開いてみると、それは舞からだった。