僕の忠犬ハチ公



 髪は薄い茶色のパーマでアイメイクを中心とした化粧が濃く、いわゆるギャルといった感じだ。

「はあ、一人ですけど」

「ホント♪だったらさぁ、私と一緒に遊ばない?」

「え?」

「私も一人で寂しいんだぁ。だからぁ、寂しい者同士、ね♪」

 そう言いながら、女は俺の前で少し屈んだ。

 襟元が大きく空いた服の隙間から、豊満な胸の谷間が見える。

 俺はごくりと生唾を飲み込んだ。

 顔が熱をおびていく。

「あー、顔赤くなってる〜。可愛い〜♪」

 女はそう言って指先でつんつんと俺の頬を軽くつついた。

「ねぇ君、名前なんてゆうの?」

「田村、真平……」

「真平君かぁ。私は菅原舞ってゆうの、よろしくね」

 舞はにっこり笑って右手を差し出してきた。

 爪は長く、一本一本全てに派手な装飾が施されている。

「……よろしく」

 俺も右手を差し出すと、それは舞の手によって握られた。

「ねぇ、真平君もさぁ、寂しいから一人でこんなとこうろうろしてたんでしょ。私も寂しいから、真平君の辛い気持ち、すごくわかるよ。だからさぁ……」

 舞の右手はするすると俺の左手を這い、腕を組まれた。

 くいっと胸を押し付けられ、柔らかな感触が左腕にダイレクトに伝わる。

 思わず下腹部に熱が集中してしまう。

「だから真平君、一緒に遊ぼうよ。二人だったら寂しくないよ。ね♪」

 舞が色っぽく俺の瞳を見つめる。

 俺は気づいてしまった。
 つけ睫毛の奥の瞳が虚空であること。

 鏡を見る度に嫌悪感がわいた自分の瞳と同じことに。

 満たされずにさ迷う者の目だ。

 俺はその瞳に、同情のような親近感のような不思議な感情を抱き、気づけば口が、「いいよ」と了承の言葉を紡いでいた。