僕の忠犬ハチ公



「なーんだ、そうだったんだ。
てゆーか頼まれてんだろ?
いいのか、一緒に食わなくて?」

「いいんだよ。もう面倒みるのはやめた」

「なんでだよ?」

「そこまで親に束縛されたくないし、それになんつーか、あいつのあまりのきもさに我慢の限界を超えてさ」

 そう言ったとたん、鈴木達がシーンとなった。

 やばっ、さすがに今の言い方は酷すぎたか?!

 掌に冷や汗がじんわりと滲む。

 俺が言い訳をしようとした刹那、

「ぷっ、あはは!! おまっきもさで我慢の限界越えるって」

「くっくっく、いや、真平ちゃんおいしいわー」

 静寂を破り、鈴木達が唐突に笑いだした。

 俺が状況を把握できずに、口を開けぽかんとしていると、三上に肩を組まれる。

「いや、田村が普通のやつでよかったよー。俺らてっきりお前もあーゆうきもいやつらの仲間かと勘違いしちゃうとこだったよ」

「なっ、勝手に勘違いすんな。誰があんな戦時中の女学生みたいなやつと仲良くするか!」

「あははっ、たしかにあいつの髪型もろ昭和だよな」

「今日からもんぺって呼ぶか?」

 鈴木の冗談に近藤と三上がぎゃははと笑う。

 俺も一緒に笑った。

 これでもう俺を縛りつけるものは何もない。

 今俺は、クラスのみんなと同じ場所に立っている。

 人間として、自分より下だと見下され、はぶられる心配はなくなった。

 むしろ周りの大多数のやつらと同じく見下す権利を手に入れた。

 『ここ』こそが俺の本当の居場所。

 『今』こそが本来の俺の姿なのだ。

 俺は、腹の底からおもいっきり笑った。