僕の忠犬ハチ公




***

 そして今にいたる。

 俺と小梅は今日も多目的ホールで食べている。

 ……いい加減言わなくては、どうせやめるのなら何事も早いほうがいい。

 俺は箸を止めると口を開いた。

「あのさ、小梅」

「なあに真君?」

 …………

「お前と俺のクラスってたしか英語の担当、同じ澤村だったよな」

「うん」

「お前のクラスってもう教科書十ページ終わった?」

「うん、終わったよ」

「ちょっとそのページの和訳見せてくんない? 俺次の授業たしかあたるんだよね」

「いいよ、じゃあ教室からノートとってくるからちょっと待っててね」

「おう」

 小梅は椅子から立つと小走りで多目的ホールから出ていった。

 俺はその姿が廊下へ消えるのを見届けると、はぁ〜とため息をつき、テーブルに突っ伏した。

 言えなかった。

 いざ言おうと思っても、あいつの顔を見ると何故か言えない。

 それになんかあいつ、一緒に弁当食うのやめたいって言ったら泣きそうだし。

 一応あいつだって女子だ。

 さすがに泣かせてしまうのは後味が悪いだろう。

「はぁ〜あ」

 俺はもう一度盛大にため息をつくと起き上がり、食べかけの弁当の唐揚げを一つ口に放り込んだ。

 くそっ、明日待ち伏せしていたら次こそ言ってやる!

 俺は唐揚げを咀嚼しながらかたく決意をする。

 しかし、そのかたい決意とは裏腹に、俺は次の日もその次の日も言えず、毎日待ち伏せをする小梅と、ずるずると昼食を食べ続けてしまうのだった。