「今日の数学の時間によ、武内に注意されたから、今思い出して若干腹立ってただけ」

 少し逡巡したあと、当たり障りのない今日起こった出来事について話すことにした。

「俺はさ、隣の山中がプリントの問題がわからないって言ってきたから教えてやってただけなのにさ、いきなり教科書で頭叩いてきて、しゃべんないでやれとか言い出してさ、マジ意味不明だし」

「え〜、それ先生ひどいよ。真君なんにも悪くないのに」

「だろ?しかもあいつ山中にはなんにも言わないで、俺だけ怒ってきたし」

「え〜、ますます理不尽だよ〜」

 俺と小梅はいつもこんなたわいもない話をしながら帰っていた。

 毎日学校に行っては授業を受け、休み時間には友達と話したり、じゃれたり。

 俺の学校生活は毎日それの繰り返し。

 小梅との時間もそんな変わらない毎日のうちの一つだ。

 別になにか不満があるわけではないし、そんな毎日の学校生活はまあまあ楽しい。

 でも俺は早く卒業して高校に行きたかった。

 俺は自由を求めていた。

 髪を染めたりパーマをかけてはだめ、ズボンからワイシャツの裾を出してはだめ、名札をつけなくてはだめ、ピアスを開けてはだめ、夜9時以降にゲームセンターやカラオケに行ってはだめ、あれもだめ、これもだめ。

 いかんせん中学校には自由がない、制限が多すぎる。