-放課後-

『終わったぁ~!!』

直哉の歓喜の声が教室に響く。

『じゃあ私、部活行くから!』

『え?早くない?』
『何かあんの?』

希美と侑梨が聞いてきた。

『うん。ちょっと早めに行こうと思って。』

神崎先輩にも用事あるし・・・。

『じゃあ、俺も行くわ!』

『え?歩?』

『おら、行こうぜ?瑞稀。』

歩はズルい。
なんで私の大好きな笑顔を向けてくるの?

『ねぇ、希美?』
『なに?侑梨。』
『歩って、誰が好きなの?』
『・・・分かんない。』

私と歩は廊下を一緒に歩いていた。

『歩はいつから詩織先輩のこと。好きになったの?』

『あ?あぁ。この前さ、部活に差し入れを持ってきてくれたんだ。』

歩が嬉しそうに話す横顔を私は見つめていた。

『その差し入れのレモンの砂糖漬けが美味しくって・・・。』

『レモンの砂糖漬けの味で惚れたわけ?』

『違う違う。その後、詩織先輩にお礼を言ったらさ・・・』

そう言って、歩はいきさつを話し始めた。


〈詩織先輩!砂糖漬け、ありがとうございました!!〉

〈ううん。良かった!歩君に食べてもらいたくって・・・。〉


『・・・それで?』

『その時の顔がさぁ~・・・。うん、見なければ分からない。』

何ソレ・・・。意味分かんない。

『あっそ、そんなに詩織先輩は可愛いんですね!』

私は少し怒りを込めた言葉を言ってしまった。

『何?あ、もしかして嫉妬?』

『そ、そそ、そんなんじゃない!!』

嫉妬してたなんて、言えるはずない。
どんどん顔が熱くなっていくのが自分でも分かった。

『瑞稀。』

『な、なにさ・・・んっ』

え・・・?

『じゃあな、真っ赤かの瑞稀ちゃん♪』

今、私の唇に・・・歩の唇が・・・。

『さ、さささ!サイテー!!!!』

私の精一杯の怒声は廊下中に響いた。