息は乱れ今どこを走っているかも分からないが、とにかく走った。
日頃の運動不足のせいかわき腹が少し痛くなったがそんなのを気にするほど、今の私に余裕はなかった。
「よぉ!」
背後からややすごんだような男の子の声がした。
わき腹を抑えつつ振りむくとそこには金髪の美少年が原付に跨っていた。
太陽に照らされきらきらと輝く金色の髪は彼の柔らかな顔だちをよりユニセックスに仕上げている。
「あ、おはよ。」
「何だか急いでるみたいね。乗ってく?」
人懐っこい笑顔を浮かべながら座席を軽くたたく彼。
半分遅刻しかけている私には心ひかれるお誘いであったが、もし乗った時に学校でどれほどめんどくさい事になるかを考えれば、乗ることはいささか合理的な選択ではない。
「大丈夫です。」
「え〜乗ってきなよ〜」
「結構です!」
遅刻のいらだちと彼のしつこさに語調が少し荒くなってしまった。
「あっそ…」
そう不機嫌そうに言い放つと、彼は間抜けなエンジン音を鳴らしながら学校とは反対方向の路地へと消えていった。
ほっとしたのもつかの間再び私は足を動かした。
今の私には遅刻と言う最大の問題があったのだ。