美しい雨―キミの笑顔を見せて―





「ただいま~」



当然、中から何も聞こえず、部屋の中も真っ暗なまま。


美雨と暮らすようになっても、1人で暮らしている時と同じ状態だ。


それでも玄関に置いてある美雨の靴を見ると、何も聞こえなくても部屋が暗くても嬉しく思ってしまう。


俺はダイニングテーブルの椅子にプレゼントと鞄を置く。


それから帰りにケーキ屋で買ってきたショートケーキが入った小さな箱を冷蔵庫に入れた。


そのまま部屋に行き、電気をつける。


部屋のテーブルの前、いつものところに美雨は真っ直ぐ前を見つめたまま正座していた。



「美雨、ただいま」



俺はそう言いながらスーツを脱ぎ、ネクタイを緩める。



「お腹、空いたろ?着替えたら作るから待っててな」



美雨から何も話してくれなくても、俺は美雨に明るく話しかけるようにしていた。