美しい雨―キミの笑顔を見せて―





「いらっしゃいませ~」



ショップに入ったと同時に、女性店員の元気な声が聞こえた。


店内には、あまり人はいなくて、いても若い女の子やカップルだけで男は俺だけ。


天井まである高い棚に隙間なく並べられたテディベアたち。


色、形、大きさ、それぞれ違うテディベア。


俺は端から順番に見ていく。


悲しいことに値札も一緒に。


たかが熊のヌイグルミ。


でも高いものは何万、何十万もする。


いくら美雨のためとは言え、俺の財布事情を考えれば、そんな高いものは買ってやれない。



「プレゼントですか?」



棚を見ていると、店員に声をかけられた。



「えっ?えぇ、まぁ……」



曖昧な返事と愛想笑い。



「彼女さんですか?」


「いや……」



美雨は彼女ではない。


彼女じゃないけど、同居してる女にプレゼントと言えば、店員に怪しまれだろうな。



「じゃー、奥様ですか?」


「いや……」


「子供さんとか?」


「いや、違います」



昔から店員に声をかけられるのが苦手で、どうしても愛想良く出来ない自分がいる。


それでも店員は誰にプレゼントするのか聞いてくる。


多分、プレゼントする相手によって値段やモノが変わってくるからだろう……。