「でも先生に、これあげる」
佐原は制服のブレザーのポケットから綺麗に包装された小さな箱を出して机に置いた。
緑の包装紙、赤いリボン、小さな鈴のオーナメントが付いてるそれは、見ただけでクリスマスプレゼントだとわかる。
「こういうことされると困るから……」
プレゼントをチラッと見て、すぐに書類に目を戻した。
「どうして?先生と生徒だから?」
わかってんなら、こんなもの持って来んなよ。
「そうだ……」
「でも、せっかく先生のために買ったんだから貰って?」
「いらないから……。他の男にあげればいいだろ?」
「先生って案外、冷たいんだね」
「何とでも言えよ……」
俺はそうポツリと呟いた。
佐原に対して、冷たいんじゃなくて面倒なだけ。
佐原も周りの生徒と同じように接してくれたら俺だって、こんな突き放すようなことはしない。
でも佐原の場合は半分、本気なとこがあるから怖いし面倒だ。
「どうしても貰ってくれないなら置いて帰るから。じゃーね、先生?」
佐原はそう言って、椅子から立ち上がった。
「ちょ、持って帰れって!」
プレゼントを佐原の方に差し出す。
「いらない」
そう一言だけ告げると、保健室から出て行った。
机に置きっぱなしのプレゼント。
どうしたらいいんだよ……。
俺は、プレゼントをとりあえず机の引き出しにしまった。



