「あれ?いつもなら教室に帰れって怒るのに、今日は怒らないの?」



佐原は俺の隣に立つと、そう言って首を傾げた。



「だって聞かないんだから怒ったってムダだろ?」


「ふーん……」



佐原は近くにあった椅子を持って来て、俺の隣に座った。



「じゃあ、ここにいてもいいんだね」



そう言ってクスッと笑う佐原。


俺は佐原を無視して、佐原の方を向くことなく仕事を続ける。


俺も佐原も話そうとしない。


チラッと横目で見ると、毛先を指でクルクルしているだけ。


早く帰れよ……。


まるで佐原の存在がないかのように、俺は黙々と仕事を続けた。