美しい雨―キミの笑顔を見せて―




美雨が頷いたと同時に、俺達の顔が笑顔になる。


俺よりも優香は、作った本人だからか、特に嬉しそうで何度も何度も「良かった」と繰り返していた。


俺達も再び食べ始める。


俺達が食べるペースよりも、ゆっくりなペースで食べ進める美雨。


美雨は取り皿に入っていた分を食べ終わり、箸を置いた。


そして手を合わせた。


“ごちそうさま”の合図。



「もういいのか?」


「もっと食べていいんだよ?」



俺と優香の言葉に、首を横に振る美雨。


美雨は自分の食べた食器と箸を持って立ち上がる。



「美雨ちゃん、私が後で片付けるから置いてて?」



優香がそう言ったけど、美雨は食器と箸を持って部屋を出ると、部屋の引き戸を静かに閉めた。


美雨は部屋を出たまま戻って来ることはなく、寝室になっている隣の和室のドアが“バタン”と閉まる音がした。