何か言わなきゃ……。
それだけが頭をグルグル回る。
「…………あ、あのな……美」
やっとの思いで口を開いた時、言葉を遮るように玄関の呼び鈴が鳴った。
玄関の方に目をやる。
何度も鳴る呼び鈴。
玄関の向こうの人物は裕介と優香だ。
「ちょっと待っててな」
俺は美雨に笑顔でそう言って立ち上がろうとした。
「…………美雨?」
俺のコートの袖口をギュッと掴む美雨。
あの時と……俺が警察に電話しようとした時と同じだ。
コートの袖口をギュッと掴む手に力が入っていく。
そして小さい子供が駄々をこねるように首を左右に振る。
ただ、顔は無表情のまま。
「美雨?どうした?」
俺がそう聞いても首を左右に振るばかりだ。
その間も玄関の呼び鈴は鳴り続けている。
もしかして玄関の外にいる人に警戒しているのか?
警察とか、美雨が会いたくない人物がいるとか思っているのか?



