「先生?何か考え事?」



佐原はそう言うと、首を傾げ、上目遣いで俺を見た。



「いや、別に?」



俺はパソコンの画面に目をやったまま答えた。



「ふーん……」



俺の答えを聞いた佐原はそう返事をすると、緩くパーマのかかった背中まである髪の毛先を指でクルクルしていた。



「なぁ、佐原?」


「ん?何?」


「ここは遊びに来るとこじゃないんだ」


「わかってるよ」


「わかってんだったら教室に戻りなさい」


「嫌だ」



ったく……。



「いいから戻れ」


「先生に会いたかったから来たのに、先生は私のこと嫌い?」



今にも泣きそうな顔をして俺を見つめる佐原。



「嫌いじゃないよ」


「それは生徒して?女として?」


「生徒としてに決まってんだろ?」


「女として見てくれないの?」



口を尖んがらかせ再び上目遣いで俺を見る。


上目遣いで俺を見る目は少しウルウルしている。


まただ……。


いい加減にしてくれ。


俺の口から小さな溜め息がもれた。