パソコンの画面をジッと見つめキーボードを打ち、仕事を始めた。
カチャカチャとキーボードを打つ音が静かな保健室に響く。
仕事をしていても頭に浮かぶのは美雨のこと。
俺は彼女のことは何も知らない。
本名も年齢も何処から来たのかも……。
どうして話さないのか、笑ったり泣いたり怒ったり……表情を変えないのか……。
自分のことを教えるのを嫌がり、警察に保護されるのも嫌がる。
やっぱ家出?変なことに巻き込まれてる?犯罪?
今頃、美雨の親は美雨を必死に探してるんじゃないんだろうか……。
もしかしたら警察に家出捜索人として届け出てるかもしれない。
謎だらけの少女。
自分のことを教えたり警察に保護されるのを、あれだけ嫌がるんだ。
何か理由があるはず……。
その“何か”の理由はわからない。
でも俺はその時、美雨を守ってやらなきゃという思いが込み上げてきていた。



