何気なくポケットに手を入れた。
手にタバコが当たった。
タバコを取り出すと、ボックスの中は空っぽ。
1本もタバコが入ってなかった。
「チッ」
小さく舌打ちをする。
そういえば、これが家にあった最後のタバコだったんだ。
歩いていた向かいにコンビニが見える。
あそこで買って帰るか。
「なぁ、ちょっとゴメン」
俺は後ろを歩いていた2人に声をかけた。
「何?」
「タバコ、切らしちゃって。あそこのコンビニで買って来るから、ここで待ってて?美雨も一緒に待ってて?」
俺は3人にそう告げて、美雨の服が入った紙袋を裕介に渡すと、走って横断歩道まで行った。
ちょうど、車の通りの信号が赤になった。
横断歩道の信号が青になった瞬間、信号待ちしていた人の中で1番最初に横断歩道に飛び出した。
その時――……。
「雅斗!危ない!」
背後から聞こえる優香の叫び声。
振り向こうとした瞬間、俺の体は宙に舞っていた……。



