「それから去年の12月、あやめちゃんが施設に来たんです。あの日は雨が降っていて一層、寒さを感じる日でした」
あの日だ。
美雨と出会った日だ。
「それなのに、あやめちゃんは傘もささず薄着でサンダルを履いていて、とても遊びに来たようには見えませんでした。それに中野さんがおっしゃったように笑顔もなく無表情のままで、何を聞いても何も応えてはくれませんでした。あの頃の、あやめちゃんの面影は全くありませんでした」
美雨は、どんな気持ちでここに来たんだろうか……。
ここに来れば、あの頃と同じように楽しい生活が出来ると思ったのかもしれない。
じゃあ何で美雨は俺が住むアパートに来たんだ?
隠れるように、警察に連絡されることも拒んだ。
なぜ?
俺は早乙女さんに疑問をぶつけた。



