美しい雨―キミの笑顔を見せて―





「それから電話することはありませんでした。でも、あやめちゃんが施設を出てから10年経った、ある日、あやめちゃんから電話があったんです」


「えっ?」



アルバムに目をやりながら話しを聞いていた俺は顔を上げ、早乙女さんを見た。



「久しぶりに聞く、あやめちゃんの声は大人っぽくなっててビックリしました。そりゃあ、10年経って、あやめちゃんも14歳になったんだから当たり前なんですけどね」



早乙女さんはそう言うとクスッと力無く笑った。



「あやめちゃんに“元気?”って聞いたら“元気だよ”って言ってくれて“どうしたの?”って聞いたら“先生の声が聞きたかったから電話した”って、そう言ったんです」



そう言った早乙女さんは目を細め遠くを見ていた。