しばらくして彼女は応接室に戻って来た。
「どうぞ」
テーブルの上にガラスのグラスにはいった麦茶を置き、俺の向かいに彼女は座った。
「ありがとうございます」
俺は気持ちを落ち着かせるために、冷たい麦茶を一口飲んだ。
テーブルにグラスを置いた時、氷が“カラン”と音をたてる。
そしてスーツの内ポケットから名刺ケースを出して、名刺を1枚取り出した。
「中野雅斗と申します」
名刺を彼女に差し出し、再び名前を告げた。
「空野園で主任をしております早乙女(サオトメ)です」
彼女は自己紹介をすると軽く会釈をした。
「中野さんは高校で養護教諭をしているんですね」
「はい」
早乙女さんは名刺を見た後、それをテーブルの上に置いた。



