駐車場に停めてある自分の車に乗り込み、スーツのポケットから携帯を取り出した。
携帯の着信履歴から優香の名前を探しリダイヤルする。
『もしもし』
「あ、優香?」
『どうしたの?』
「優香に頼みがあるんだ……」
『何?』
「これから行かなきゃいけないとこがあって……。悪いけど、うちへ来て美雨へ晩ご飯を作ってやってくれないか?」
『それは別に構わないけど……。裕介もそろそろ帰って来るし、買い物してから裕介と一緒に行くね』
「ありがとう。助かるよ。鍵はポストへ入れとくから」
『ねぇ、何かあったの?』
「……まぁ、いろいろと、な」
『何?美雨ちゃんのこと?』
「なぁ、優香?」
『ん?』
「俺が帰るまで裕介と待っててくれないか?帰って来たら話すから」
『うん。わかった』
電話を切った。
携帯を助手席に置く。
俺と佐原の会話を美雨は聞いていたはずだ。
俺が出かけた後、美雨がいなくなるようで怖かったんだ。
だから優香に美雨に晩ご飯を作りに来て欲しいと頼んだ。
本当の理由は、俺が帰るまで美雨がどこにも行かないようにするため。
「俺って異常だな」
そう独り言を呟きクスッと笑う。
そして車のエンジンをかけると、駐車場からゆっくり車を出した。