「私ね、姉妹が出来た事が凄く嬉しかったの。だから最初は、あやめと仲良くしようとしたの。でもね、ママが、あやめと遊ぶのも話すのもダメって。あやめは余所の子。あやめは悪い子。なずなは良い子だから、悪い子とは遊んだり話したりしたらダメよって。あやめが私に近付こうものなら物凄い剣幕で怒ってた」
「えっ?」
「子供ってね、親の言う事が絶対だと思うとこがあってね。
私もそうだったの。
ママが言うことは守らなきゃって。
あやめは余所の子。
悪い子って事が、だんだん洗脳されていくの。
だから、あやめには近付かないようにした。
あやめも私たちを避けるようになって、部屋に閉じこもるようになったの。
学校にも行かなくなって、完全な引きこもり。
誕生日のパーティーも海外旅行も国内旅行も家族の行事には、あやめは参加しなかった。
てか、参加させてもらえなかったんだけど。
でも、パパの会社関係の行事には無理矢理にでも、あやめを参加させてたけどね。
で、偽りの仲良し家族を演じるの。
それも世間体のため」
佐原はクスクス笑いながらそう言った。
佐原からの、ありえない告白に俺の体は怒りで震えていた。
世間体、世間体って何なんだよ!
自分達の勝手で美雨を振り回して、美雨の気持ちはどうなんだよ!
唯一、血の繋がった父親にも助けを求める事も出来ず、継母と妹には余所者扱いされて……。
美雨は……美雨の気持ちは……。
俺は悔しくて手をグッと力を入れて膝の上で握り締めた。