美しい雨―キミの笑顔を見せて―




広く開けられた玄関。


玄関から見える部屋には、こちらに背を向けて座っている美雨。


玄関に突っ立たままの俺と佐原。



「はぁ……」


「先生の嘘つき……。やっぱ、いたじゃん」



おでこに手をやり溜め息をつく俺と佐原の言葉が同時に重なった。


まるで浮気がバレた俺と浮気相手の彼女と本命彼女のような三角関係の修羅場を思わせるような雰囲気だ。



「あの子は親戚の子で、事情があって預かってんだよ」



苦しい言い訳。


その時、美雨が立ち上がった。


無表情のまま、こちらに体を向けた。


佐原を見た瞬間、顔は無表情のままだけど、体が少しビクンと揺れ、そのまま部屋を出て隣の部屋へ入った。



「ふーん……親戚の子ねぇ……。やっぱ、先生は嘘つきだね」



佐原は隣にいる俺を見上げ、そう言うとクスリと笑った。



「嘘じゃない」


「もし、あの子が先生の親戚なら、私も先生の親戚になっちゃうよ?」


「えっ?何、言って……」


「だって、あの子、私のお姉ちゃんだもん」



佐原はクスクス笑いながらそう言った。


美雨が佐原の姉?


嘘だろ……。


佐原からの、とんでもない告白に、俺の体から血の気が引いていくのがわかった。


目を見開き佐原を見る。


佐原は何が面白いのかクスクスと笑い続けていた。