佐原の口から出た信じられない言葉と美雨の名前。
何で美雨のこと……。
何で……。
何で、どうして……。
そんな疑問が頭をグルグル回る。
「ねぇ、先生?美雨ちゃん見せて?」
「佐原が、どこでそんな情報を聞いたかわからないけど、俺には彼女なんていないし美雨って女も知らない」
俺は冷静にそう言った。
でも、本当は動揺していた。
相変わらず疑問が頭の中をグルグル回っている。
「でも先生、4月くらいだったかな?電話で美雨って名前を言ってたじゃん。確か、美雨に聞かれたらマズイとかって……。保健室のドアの外で聞いちゃった。その時ね、美雨って子が先生の彼女なんだなぁって……。そしたら、どんな子なのか見たくなっちゃったんだ」
佐原はそう言うと、またクスクス笑った。
あの時の……。
俺の頭の中の疑問が、やっと解けた。
電車で仕事に行った時だ……。
あの時、駅で美雨を探していた女性と会って、昼休みに優香に電車して……。
その時の会話を佐原に保健室の外で聞かれてたんだ……。



