夢の時間

何もなかったように起き上がり椅子に座ると、平田が目の前に立った

「立って」

言われるがまま立つ

「背、伸びたね 身体付きも少したくましくなった」
「何?」

「上を見ろ」

いつもの優しい平田の言葉ではなく、少し低い声で言われた指示

恵理子は言われたとおり上を見た・・・

っと次の瞬間、眩暈にバランスを崩し身体が浮いた

平田の手が背中に回ったのが分かった

足の力が抜け思わず平田にしがみついた

「分かった?これが今の恵理子ちゃんの状態」
「・・・そんな・・・」

「横になって 点滴するから」
「えっ・・・来月、大会があるの 出場できる?」

「まだ分からない 回復次第かな」
「点滴、ドーピングにならない?」

「大会五日前まで回復しなかったら無理だよ」
「・・・」

「大会に出たかったら今は回復に専念しよう」
「・・・わかった」