夢の時間

溢れる涙で視界ぼやけ俯く恵理子に、平田はいつもの穏やかな声で宥めるように言う

「運動は水泳じゃなくても昔あこがれた体操でもいいんじゃないか?」
「体操部なんてないよ」

「そぉか・・・じゃぁ陸上部とか・・・」
「水泳部がいい!」

恵理子にしては珍しく診療科に響き渡るような大きな声で叫んだ

「そんなに興奮したら心臓に良くない 落ち着こう」
「せっかく見つけたのに・・・夢中になれそうなもの見つけたのに・・・友達もいて、顧問の先生もいい人ですごく楽しそうな部活なのに・・・」

恵理子は下を向いたまま行儀よく揃えた手の甲には幾粒もの涙がこぼれていた

暫く様子を見つめた後、平田は腰を上げ白衣を脱ぐと山積みになったカルテを片づけ、恵理子のカルテを閉じた

恵理子はそんな平田の背中を睨んでいた