「ああ、社長とな」

「また、社長とー!?」

父はひぃぃと 小さな呻き声を上げてそそくさと家を出て行った。

「愛花ちゃん、そこに紺色の鞄があるでしょ、とってちょうだい」

「はぁい」

母はもう着替えて玄関でヒールを履いていた。

愛花は玄関まで鞄を届けると

「ありがとう」

「なるべく早く帰ってきてね。今日は暇なんだから」

「わかった」

いってらっしゃいと手を降った。