主人公、
二宮愛花。
高校二年生。
今、冷蔵庫の前で牛乳を一気飲みしようして咳き込んでいた所。
後ろから唐突に父の声がした。

「佐田春樹って覚えてるか?」

愛花は驚いた。
お父さんの口からその名前が出てくるとは。

その名前をそうして聞くまで愛花はその子の事を思い出すことはなかっただろう。

佐田春樹。
愛花はその子の事を良く覚えていた。
小学四年生まで隣の家に住んでいた幼なじみでとってもなかよし。

「春樹君、泣いてるの?何かあったの?」

「あのね、みんながね、春樹君をぶりっこぶりっこって言っていじめるの~」


春樹君はちょっとしたことですぐ泣く、泣き虫な男の子だった。

しかも、春樹君は自分のこと君付けだったから、みんなにぶりっこぶりっこっていじられてた。


そして、その反面とても笑顔が可愛い男の子だった。

明るくて、元気で
泣き虫、そんな男の子。

春樹君が隣町に引っ越した時は何日も泣いたっけ。

その春樹君がお父さんの口から出てくるなんて何事?

愛花は疑問に思った。

「お前、この頃成績悪いだろう」

「え、うん…」

愛花は申し訳なさそうに頷いた。

「だから家庭教師を雇おうと思うんだ」

「家庭教師!?」

「そうだ、佐田春樹君をな」

嘘!?と愛花は一瞬戸惑った。

「何で急に!?」

「佐田春樹君がこの近辺にまた引っ越してくるらしいんだ」

「だから」