「お待たせ」
にっこり微笑んで言うけど、たぶんあたしの顔は引き攣っている。
パステルカラーの明るい色合いの服のあたしとは対象に、ダークグレーのスーツにブラウンのネクタイの彼。
まるで、楽園と地獄。
そう考えてしまうのは、彼が浮かべる表情が、いつもと180度違ったから。
険しい表情をした彼は、あたしに視線を合わせない。
なに。
なんなの、これ。
なんとか冷静でいようと、何事もないように話を振る。
「今日はどこでごはん食べる?」
「…………」
「駅前に、美味しい洋食屋さんが出来たんだって」
「………」
「あたし、パスタ食べたいな」
「…………雨衣(うい)」
