(嫌な夢みちゃった……)
もちろん彼との思い出は、今では思い出したくない出来事であって、たとえ彼と別れたのが一昨日であったとしても。
どうしてこんな夢を見たのかなんて誰も知りはしないけれど、どうして今日に限ってこんな夢を見せるのか、恨まずにはいられない。
洗面所に行くと、予想通りひどい顔をしていた。
昨日、お風呂に入らずに化粧だけ落としてそのまま眠ったのだから、当たり前か。
今日が土曜でよかった、と思いながら鏡に映る涙のあとを拭う。
……この涙が意味するところは。
彼を思い出したから、ということだけで結論づけてしまいたいけど、そうもいかない。
昨夜の記憶は寝て覚めてからも鮮明に蘇り、あたしの心を支配した。
ぐるぐると、彼ではない『男』が頭と心を支配する。
それは、無表情で真面目で仕事に厳しくて、でも周りの人間からは信頼の厚い人。
とっつきにくいけど、上司として尊敬をしていた。
…………なのに。