Love Water―大人の味―





「なんて格好してるんだ」



呆れたような声音だけど、無表情。



眉を僅かに寄せただけで、いつもと変わらない真一文字に引き結ばれた唇。



「あ………」



なんで部長がここに?とかそんな問いさえ、口から出ない。



ただ、呆然と彼を見上げる。



その瞳を見つめ返して、何もしゃべらないあたしに痺れをきらしたのか、部長は困ったように口を開いた。



「なんでそんなに濡れてるんだ」



「……傘、なくて」



「なんで酒くさい」



「……さっきまで、飲んでて」



「1人でか」



『1人』という言葉に、どうしようもなく悲しくなる。



あたしは1人よ。



上から聞こえてきたため息に、びくりと肩を揺らした。



「じゃあ、なんで泣いてる」



「………っ」



俯きがちだった顔を勢いよく上げた瞬間に、零れた涙。



そしてそれは、呆気なく決壊した。