Love Water―大人の味―





雨だ。



突然の雨は、まだマンションまで距離があった道のりの中、容赦なくあたしの身体を打ち付けた。



惨めな雨衣。



まるで、捨てられたアヒルの子どもみたい。




……やだ、またポエマー雨衣が戻ってきたみたい。



雨に濡れて、少しはさめたかと思った酔いは、全然さめてない。



そしてついに限界がきた。



「わっ……」



変な音を立てて、ヒールをはいた足が不自然に曲がる。



と、同時に倒れる身体。



なすすべもなく、無惨にも床に転がる自分。



茶色のカーペットが目の前に映って、その一部が濃い色になる。



泣いてる、と気づいたのは微かな音が聞こえてから。



それがエレベーターが到着した音だと気づくのに、とてつもない時間を要した気がする。