Love Water―大人の味―





梨華には家に帰ると言ったけど、とてもじゃないけどそんな気分にはなれない。



家で1人でいたら、絶対泣く。



それこそ、明日出社できるような顔ではなくなってしまう。



言い訳を誰にするともなく、心の中で自分に言い聞かせて、手近なバーに入る。



二次会の始まりだ。



1人ぼっちの、二次会。



「……さぁ、飲むぞ」



1人で呟いて、マスターにお酒を注文する。



周りには、さすがにあたしみたく1人で来ているお客さんはいない。



中には恋人同士であろうか、仲良さそうに語り合う男と女もいる。



目障り。



そんな言葉しか頭に浮かんでこなかった。



なんて卑屈になったのだろう。



だけど、止められない。



止まらない。



今更になって悲しみの渦が押し寄せる。



可哀相な雨衣。



男にフラれて1人で飲んで、夜を明かすのよ。



ポエマーになったかのような気分で、差し出されたお酒を一気にあおった。