バーを出ると、まだ21時前ということもあり人はまだまだ多い。
6月の湿っぽい風がふんわり長いあたしのロングヘアーを揺らす。
「じゃあここで別れるけど、1人で帰れるわよね?」
携帯を開いた梨華は時間を確認しながら言った。
「うん、大丈夫。ごめんね、急に付き合ってなんて言って」
「いいのよ、別に。
それより、寄り道しないでまっすぐ家に帰りなさいよ。
それでさっさと寝る。
明日仕事を休みでもしたら、あんたのこと見損なうからね」
「………はい」
失恋したあたしに対して、優しい言葉はかけない梨華。
でも、心配して言っているということは、その瞳の暖かさから伺える。
親友の暖かさに触れながら、あたしはくるりと背中を向けて歩き出す。
「気をつけるのよー」
足元がおぼつかないあたしを見兼ねてか、梨華の声が響く。
それに片手を振って応えて、雑踏に紛れる。
人に埋もれる。
