アイトが一通り話し終えると、メグミは立ち上がってアイトの前にちょこんと立った。
「ねえ、アイト。死神について、豆知識みたいなのを教えてあげるよ。……その前に、アイトは私以外の死神と出会ったこと、ある?」
 突然そんなことを言い出すメグミに、アイトは首を傾げながらも、「二、三人くらいなら……」と正直に答えた。


 普段、他の死神と出会うことはほとんど無い。
 死神は、一人一人の仕事領域が決められていて、その範囲内にある死の仕事を死の王から定められる。
 仕事領域の範囲は、大体半径十キロメートルほど。同じ場所で何人もの人が死ぬことは珍しい話なので、大概はこの辺りを一人か二人でうろつくことになる。

 死神同士の集会も無く、ただ好き勝手に仕事領域で過ごし、与えられた仕事をこなすだけ。死神というのは、そんなものだ。

 アイトの尊敬している人物、”死の天使”という威名を持つ死神も、実際は会ったことが無い。ただ、メグミからその存在を教えてもらって、勝手に尊敬しているだけだ。


 ちなみに、メグミの仕事領域はアイトの仕事領域の隣にあるだけで、普通は出会うことも無い筈なのだが、個人的に会いにいったり、会いにきてくれたりする。
 死の王も、さすがに仕事中以外の私生活までは口出ししない様だ。