長くて少し急な坂を、歩夢の乗った自転車が下ってゆく。
 その途中、歩夢は背中がぞくりと震えるのが分かった。同時に、首辺りに寒気もした。

 ーー何だ? 気持ち悪い……。

 歩夢は首を傾げるが、今はそれどころじゃないとハンドルをぐっと強く握る。早く行かなくては、早く行かなくては__

 次の瞬間、パン、とプラスチックのはぜる音。続いて、カランカランと、何かが転がる音がした。

「え……なんだ、今の音?」
 歩夢は走りながら辺りを見回すが、何も変わった様子は無い。唯一変わったことといえば、坂を下りきったところにある滅多に鳴らない踏切の警報機が、甲高い音をたてて喚いていることぐらいだ。

 ーー何だったんだ、一体。とりあえず停まらなくては……

 歩夢はブレーキをかけようとした。