アイトは、世の中のことをよく知らなかった。過去の記憶を失っているからか、それとも過去に何か問題があったのか理由は分からないが、とにかく常識にうとく、人間の姿になっても浮いてしまう存在だった。日本語を話せていたことだけでも、奇跡と言えよう。
 そんなアイトを支えたのは、死神の鎌と、メグミだった。二人は、世界のことや人間の常識を教えてくれた。

 アイトが死神になりたての頃に持ち合わせていた人間らしさといえば、言葉を話せることと……感情を持っていることだけだった。
 特に、人の命を奪うことへの感情は、人一倍強かった。何故かは分からない。