「それじゃあ」


 理那は開いた手を左右に振り、短い別れを告げた。そのまま俺に背を向けて歩きだす。

 呼び止めるのも、なんだか変な気がする。

 俺も「それじゃあ」と彼女と同じ言葉を繰り返してから反対の方向へ歩き出した。


 顔になにか冷たいものが触れた。

 ふと見上げると、雪が降ってきたようだ。


 小さな粒子が街に静かに降り注ぐ。右手を開いて雪を受け止めてみる。すると雪は音もなく崩れ、形を失う。


 しばらくその様子を見つめながら、もの思いに耽った。



 それは、理那に言われたある一言を思い出したからである。