「そろそろ、帰る時間だね」

 寒空の下、白い息を吐きながら理那が残念そうに言った。今日初めて出会ったのに、昔から友達だったような、そんな不思議な錯覚を覚える。


 腕時計に目をやると、もう深夜二時を回っている。いつもなら間違いなく寝ている時間だ。しかし、街はまだまだ眠らない。人は減ったが、光を放つネオンは輝きを増すばかりだ。


「理那さん、俺はもう家に帰りますね。今日も仕事があるし、久々に遊んだから疲れちゃいました」

「そう、和人くんはもっと沢山遊んどいた方がいいよ、まだ若いんだから」

 明らかに自分の方が若いのに、憎たらしいことをいう子だ。だが、確かに俺はまだ若いのかもしれない。

 若い、若くないは結局気の持ちようなのだ。

 年齢に従って焦って結婚を急いでいたのも、今では馬鹿らしくなってきている。

 こんな愉快な人と楽しく遊べたのだから、やっぱりもうちょっと遊んどいた方がいいのかもしれない。