何故、そんな人の傷に触れるようなことを平気で言えるのだろう。役目を果たせなかった指輪なんて、ほんと、人に見せるようなものじゃないと思うのだが……

 しぶしぶとカバンの中からラッピングの取れた小さな箱を取り出す。箱を開けて、理那に渡した。


「あらら、すごく可愛い指輪じゃない。いいなぁ。私もこういうの欲しいよ。高かったんでしょ?」

 箱の中に納まった指輪は、静かに光りながら、それでいて美しい佇まいをしていた。

「もちろん。結構な金額でした。だけど、渡せなかった今となっては、価値なんてないも同然です。こういうものは、貰うべき人が手にとって、初めて価値が生れる」

「そうかもしれないね。見せてくれてありがとう」


 俺は手渡された箱にもう一度蓋をし、カバンの中にしまった。行き場所のないこいつはかわいそうだ。