アンシャンテを出る頃には、既に深夜十二時を回っていた。


 結局、バーの代金は全部俺が支払うことになり、結構な金額だった。

 何故かというと、会計の際、理那とじゃんけんをする事になってしまい。しかも負けたため、そんな事になってしまった。


 まあ、深く気に留めることでもない。


 それにしても、夜の街は元気だ。

 いまだに人々は留まることなく、流れ続けている。

 まるで海の中のようだ。辺りには、クラゲのようにふら付く酔っ払いのサラリーマン。見た目未成年の稚魚カップル。ブランドものに身を包んだ女性。目付きが鋭く、鮫のようだ。


 多くの人が、夜という海を泳ぎ、思い思いに楽しんでいる。俺はあながち、カレイかヒラメだ。海底を這う様に泳いでいる。