万華鏡の中身を粉々に砕いて、散りばめたような世界だった。


 美しく、しかしどことなく寂しさを湛えている世界。俺が住んでいる世界が、こんなにも美しかったなんて……



 ドアを開いた途端に、夜の街が視界を支配した。


 圧巻。それ以外の言葉は見当たらない。


 そして言葉を失い。ただただ景色を眺めていた。


 今まで見た事が無いほど遠くまで見渡せる。一番遠くの方は霞んでよく見えないが、海があるようだ。薄らと展望台の灯りが見える。



 そうだ、景色を眺めている場合じゃない。理那だ。理那はいるのか?


 屋上は思っていたよりも広い。


 貯水タンクや電子制御盤などがある。それらからは沢山の管やコードが伸びており、屋根に突き刺さっている。


 それらには触れないように気をつけて歩き回ったが、どこを探しても理那の姿はなかった。