呼吸を整えた後、体をまっすぐと伸ばし、目の前にあるドアに触れた。



 ひんやりとした冷たさが、指先を通して脳へ浸透する。


 それは脊髄を通り、体中をいっぺんに冷やしていく。同時に、その冷たさが、このドアの向こうが外である事を教えてくれた。



 気が付けば呼吸は整っていた。



 汗は少しずつ乾いてきたようだが、スーツの内側に着ているシャツは肌にぴったりとくっ付いてしまっている。だが、そんな事に構っている暇は無い。



 ドアノブに手をかけた。ゆっくりとノブを回す。鍵が閉まっていると思ったが、ドアはすんなりと開き、冷凍庫を開けたときの様な冷気が流れ込む。



 それは熱を帯びた体には余りにも心地よく、まるで俺を外の世界へと誘っているように思えた。




 俺にその誘いを断る理由はない。


 大きくドアを開き、外へと出た。