リングは彼女に



 さらに階段を駆け上がる。


 段を踏みしめるごとに太腿が痺れる。


 膝を上げるごとに関節が軋む。


 足が全体から悲痛な叫びを上げている。



 走るのをやめろと俺に訴える。



 だが此処で走るのをやめてはいけない。今立ち止まってしまったら、何かに負けてしまいそうだ。


 走ることはこんなにも辛いことであっただろうか? 昔は走るのが楽しくて楽しくて、仕方が無かった。


 体で風を切って走る感覚が気持ちよくて、馬鹿みたいに走っていた。


 あの頃、部活動をしていた時代は、いつも残って一人で走っていたくらいだ。


 そういえば、家に帰ってからも、夜中、自主トレで近所を走り回っていた。それが今は、なんて様だ。



 『T-46』と見えたところで思い切り咳き込んでしまった。


 呼吸のタイミングがずれて、しばらく無酸素状態になる。水分の無くなった喉が引きつる。




 苦しい。